【専門医がわかりやすく解説】心筋梗塞のカテーテル治療後から退院まで

心臓の病気として多くの人が患う「心筋梗塞」のカテーテル治療後から退院までについて説明いたします。

私は10年以上循環器専門医として診療を行なっています。

資格としては、

「循環器専門医」:心臓全般の専門的知識を有する医師

「心血管インターベンション治療学会専門医」:心臓や血管のカテーテル治療を専門的に行える医師

などの心臓や血管の病気を治療するエキスパートとしても働いております。

インターネットには「心筋梗塞」に関する数多くのホームページがありますが、私の経験から患者さんが疑問に思う点などを踏まえながら、患者さん目線に立って説明していきたいと思います。

👇心筋梗塞のまとめを記載した記事です。これを読めば心筋梗塞についてはおおまかにご理解いただけると思います。ぜひ参考ください。

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目次

カテーテル治療直後

カテーテル治療中や治療直後の患者さんの多くは、のちのち、

「あまり覚えていない」と当時の様子をはっきりと覚えておられないことが少なくありません。

それくらい激烈ですし何が起こっているのか夢の中にいるような感じでことが進んでいくようです。

心筋梗塞はできるだけ早く治療しないといけないので、我々医療者は、全力全速力で治療にあたります。あまりのスピードに何が何だかわからないということになっているのだと思います。

治療直後から落ち着くまでの様子を説明していきます。

比較的軽症の心筋梗塞であった場合

心筋梗塞を発症した患者さんが病院に辿り着き治療が成功した場合、90%以上が比較的良好な経過をたどります。その場合について説明します。

カテーテル治療が成功終了すると、胸痛などの症状は劇的に改善することが多いです。数日は違和感や軽度の痛みが残存することがありますが、日にちぐすりで改善します。

ステント血栓症

しかし、胸痛の悪化は要注意のサインです。最悪の場合、心筋梗塞が再発していることもあります。

これは「ステント血栓症」と呼ばれ、治療してステントを留置したところに血栓という血の塊が急速に増殖しステント内を閉塞させてしまいます

下の図のように、留置したステントの中に血栓が溜まり血流が途絶え、心筋梗塞と同じような状態になってしまいます(左図がステント留置直後、右図がステント内に血栓ができた状態=ステント血栓症)。

ステント血栓症は致死率も高く、かなり注意が必要です。ステント血栓症を起こさないように、抗血栓薬を2種類内服する必要があります。

集中治療室(ICUまたはCCU)へ

術後はカテーテル室からICUやCCUと呼ばれる集中治療室で過ごしていただきます。

看護師の数が多く患者さん2人に対して看護師1人が対応

集中治療専門医などのICU専属の医師が常に待機

心電図モニター、酸素モニター、自動血圧計などを装着し、さまざまなモニターで管理

心不全、心破裂、不整脈など心筋梗塞後の早期合併症に対応できるように集中治療室で急性期を過ごしていただきます。

集中治療室へ移動直後は基本的に安静です。排尿するために立ったりも禁止されているので、尿をするために尿道から膀胱にかけてカテーテルと呼ばれる管が入った状態となります。安静がこれ以上必要がないと主治医が判断したら、このカテーテルは抜去されます。それまで苦痛を訴えられる患者さんは少なからずいます。

翌日、元気であれば食事や後述する心臓リハビリなどが始まります。どの段階で安静状態が解除されるのかというのは、患者さんの状態を見て主治医が判断することになります。

集中治療室では心筋梗塞が軽症であれば1〜2泊して問題ないことを確認し一般病棟へ転棟となります。

一般病棟で

一般病棟へ転棟すると、元の生活に戻る準備を徐々に行っていきます。

一般病棟に行けたからといって、すぐに自由になるわけではありません。

身体中に血液を送り出している心臓がダメージを負っているのですから、一気に元の生活のような負担をかけることは禁物で、ゆっくりと回復させる必要があります。

そのために「心臓リハビリテーション」が行われます。

心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)とは?

患者さんが体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することをめざしておこなう総合的活動プログラムのこと

運動療法と学習活動・生活指導・相談(カウンセリング)などを含む

食事指導や禁煙指導も行う

・専門知識を持った多くの専門医療職がかかわる

心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)とは、患者さんが体力を回復し自信を取り戻し、快適な家庭生活や社会生活に復帰するとともに、再発や再入院を防止することをめざしておこなう総合的活動プログラムのことです。

プログラムは下図のように目標などが細かく設定されています。

循環器学会ガイドラインより参照

内容として、運動療法と学習活動・生活指導・相談(カウンセリング)などを含みます。
心筋梗塞の患者さんは、心臓の働きが低下し、また安静生活を続けたことによって運動能力やからだの調節の働きも低下しています。

そのため退院してからすぐには強い活動はできませんし、またどの程度活動しても大丈夫なのかが分からないために不安もあります。

これらに対して心臓リハビリで適切な運動療法を行うことが役に立ちます。退院後にどんな運動をどれだけしたらいいのか数値化することもあります。

さらに、心臓病の原因となる動脈硬化の進行を防止することをめざして、食事指導や禁煙指導も行います。

心臓リハビリでは、専門知識を持った医師、理学療法士、看護師、薬剤師、臨床心理士、検査技師、作業療法士、健康運動指導士など多くの専門医療職がかかわって、患者さん一人ひとりの状態に応じた効果的なリハビリプログラムを提案し実施します。

退院まで

重症度や合併症の有無(糖尿病や腎不全など)によってもだいぶ異なりますが、比較的軽症の場合は、約2週間で退院となります

退院までに、お薬の調整、運動療法の説明、食事療法の説明、今後の通院についての説明し理解していただいた上でめでたく退院の運びとなります。

重症であった場合

10%弱の患者さんは来院する前から心不全などを合併し重症化していることもありますし、治療中や後から心不全を発症したり、不整脈や腎不全などさまざまな合併症により重症化する可能性があります

その場合は、軽症の患者さんと比較して入院が長くなることはもちろん、手術が必要になったり、人工呼吸器が必要になったり、個々の状態や状況に応じて複雑な経過をたどります。

重症の場合は、「軽症の場合」の患者さんと違って、入院期間は大幅に延びます。

私が担当した心筋梗塞患者さんで最長の入院期間は6ヶ月でした。その患者さんは、生死を彷徨い大変危険な状態を何度も繰り返しましたが、比較的元気な状態で退院することが可能でした。2022年5月現在、お手紙をいただくなど10年以上経過しても元気でお過ごしです。

しかし、重症化した場合、残念ながら死に至るケースもときどき遭遇します。さまざまな手段を使いますが、現代の医学でも難しい場合もあるのは間違い無いです。

まとめ

比較的軽症であった場合

・集中治療室で1〜2泊。問題ないことを確認し一般病棟へ。

・一般病棟では心臓リハビリを開始。運動療法と学習活動・生活指導・相談(カウンセリング)を受ける。

・退院までは約2週間程度。状態によって異なる。

重症であった場合
・「軽症の場合」の患者さんと違って、入院期間は大幅に延びる。死に至るケースもある

術直後に注意すること
・ステント血栓症:ステントが血栓によって急に閉塞し心筋梗塞が再発してしまうこと。2種類の抗血栓薬で予防する。
・治療後12日は心不全、不整脈、心破裂など重篤な合併症がないかどうか集中治療室で観察を要する。

心筋梗塞は、重篤な病気ですので、入院期間は少なくとも2週間程度は必要となります。また、重篤化した場合は、死に至るケースもあるほどです。
まずは心筋梗塞にならないように「予防」に力を入れましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考にしていただければ幸いです。

👇つぎは心筋梗塞の予防についてです。ぜひ参考にしてください。

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<参考文献>

⭐️循環器学会:急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_kimura.pdf

⭐️循環器学会:虚血性心疾患の一次予防ガイドライン

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2012_shimamoto_h.pdf

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この記事を書いた人

総合内科専門医と循環器専門医資格をもつ精神科医の備忘録です。
①医療のこと(循環器、精神科領域中心)
②子供の受験のこと(小学6年生 浜学園 公文)
③投資のこと(米国中心の投資について)
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⑤論文のこと(論文の読み方、書き方など)

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