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【精神科医が解説】ベンゾジアゼピン系睡眠薬のメリット・デメリットとは?

 
ぽりぽり
今回は、良くも悪くも睡眠薬の王道であった「ベンゾジアゼピン系の睡眠薬」について説明します
 
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬というのは、
ハルシオン(トリアゾラム)
レンドルミン(ブロチゾラム)
サイレース、ロヒプノール(フルニトラゼパム)
ドラール(クアゼパム)
などが挙げられます。
*商品名(一般名)です。一般名は主にジェネリック薬品の名称で使われることが多いです。
 
ただ、最近では、不眠症の第一選択として使用される頻度は減っています
その理由やメリット、デメリットを説明いたします。
 

不眠症の原因と脳の興奮系・抑制系バランス

不眠は、以下のような様々な原因によって引き起こされます。
ストレス(仕事、人間関係、家庭、学校など)
アルコール摂取
薬の服用
精神疾患(うつ病、躁うつ病など)
生活習慣病
 
これは、以前のブログでも説明いたしました
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脳内には、「興奮系」と「抑制系」の神経が存在しています
 
通常はバランスよく存在していますが、上記のような原因によって、興奮系が優位となることで不眠症を発症すると考えられています。
 
 
不眠症では脳の興奮系が優位になっているため寝ることができなくなっています
 
脳の中では、情報をやり取りする際に、神経伝達物質というものを使っています
神経から神経へ神経伝達物質をパスしてキャッチすることで、脳の中で情報を処理しています。
 
神経伝達物質の中で、興奮系には「オレキシン」と呼ばれる物質が関与しており、抑制系には「GABA(γ-アミノ酪酸)」が関与しています。
 

GABAとは

GABAは、脳の中での情報の受け渡しをする神経伝達物質の1種です。脳の神経細胞の活動を抑える作用があり、脳をリラックスさせる神経伝達物質としては、脳内で一番多い物質になります。
 
量だけでみればグルタミン酸という物質が最多なのですが、そちらはGABAと反対に脳を興奮させる物質です。ですので、脳内のリラックス系神経伝達物質としては、GABAが一番多くを占めることになるのです。
 
GABA入りのチョコレートなどが売っていますが、リラックス効果を狙っているのですね。
 

ベンゾジアゼピンとGABAの関係

ベンゾジアゼピン系のお薬は昔から抗不安薬や睡眠薬で広く使われますが、「ベンゾジアゼピン受容体」に働くことで神経伝達物質の「GABA」の作用を強め、抗不安や催眠の効果を発揮するお薬です。
受容体とは、神経伝達物質をキャッチするグローブのようなものです。受容体で神経伝達物質をキャッチすることで、情報が伝達されるんです。
 
 
ベンゾジアゼピン系のお薬は、脳の活動を抑えることで抗不安作用や抗けいれん作用などもあらわし、睡眠障害の他、けいれん発作の予防薬や麻酔前投与薬などとして使用される薬剤もあります。
 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬のメリットとデメリット

ベンゾジアゼピン系のお薬のメリットは、
・即効性がある
・不安や催眠だけでなく、肩こりなどを筋肉のこわばりを緩和させるものもある
 
デメリットとして、
・眠の質が落ちる
・ふらつき、翌朝への持ち越し、健忘(物忘れ)などの副作用がある
・転倒のリスクがある(特に高齢者)
・耐性(効果が薄れてくる)や依存性(やめられなくなる)がある
 
最大のメリットとしては、飲んですぐに効果を実感できる「即効性」で、作用時間も様々な種類があるので、使用目的に合わせた処方がしやすいお薬ではあるのですが、その一方で、飲み続けると「耐性(慣れ)」が生じやすく、身体・精神ともに依存しやすい性質があります。
 
結果として、最近では第一選択として使われることが少なくなった印象を受けます。
 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の副作用

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には、下記のような副作用が引き起こされるリスクがあり、そのことを留意して服用することが大切です。
精神神経系症状
一過性前向性健忘
依存性
 
それぞれ順番に解説します。
 

精神神経系症状

精神神経系症状とは、ふらつきや頭痛、めまいなどの症状のことです。
 
ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、筋肉を弛緩させる作用があるため、ふらつきを起こす可能性があります。
そのため、服用後は速やかに就寝の準備を行うとともに、翌朝の起床直後も注意しなければなりません。
特にご高齢の方は、もともと筋力が弱っていますので、転倒のリスクが高いことから使用を控えることが望まれます。
 
ほかにも、ふらつきやめまいといった不快に感じる副作用が見られることがあります。
このような副作用が見られた場合は、担当医に相談した上で、適切な処置を行ってもらうことが大切です。
 
繰り返しになりますが、
 
ぽりぽり
転倒リスクの高いご高齢の患者さんは中止か変更を検討すべきです
 

一過性前向性健忘

一過性前向性健忘とは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用した後の記憶を失うことです。
 
服用した本人は寝たつもりだったとしても、実際には寝ずに起きたまま行動していることがあります。
記憶を失っているためまったく自覚が無い行動をした形跡が翌朝に見られます。
 
服用した本人は、行動のコントロールをすることができないため、介護者や家族が様子を見る必要があります。
ですから、介護の負担が増大するケースがあります。
 
特に、超短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用した際に起こりやすいため、超短時間作用型の睡眠薬を服用する際は、患者様が危険な行動を取らないように、介護者が注意を払うことが大切です。
 

依存性

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、即効性が高く依存に陥ってしまう可能性があります。
 
睡眠薬の依存症には大きく分けて、精神的依存と身体的依存の2種類に分けられます。
 
精神的依存とは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用しないことによって、睡眠障害が起こる生活に対する不安感から、睡眠薬の服用を停止できなくなる依存のことです。
 
一方で、身体的依存とは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用を停止することによって、身体に不調をきたしてしまう状態のことです。
 
上でご説明したように、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用するとGABA受容体に作用することで睡眠作用や鎮静作用がえられます。
 
その刺激があることに身体が慣れてしまうことで、服用を停止することによって、身体に不調が生じてしまうのです。
不調には、頭痛やふらつきなどの身体的不調だけではなく、強い不安感や興奮状態といった精神的な不調も含まれます。
 
 
ぽりぽり
できる限り依存を防ぐためにも、必ず担当医や薬剤師の指導のもと、慎重に服用することが大切です。
 

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の種類

主なベンゾジアゼピン系の睡眠薬として、
ハルシオン(トリアゾラム)
レンドルミン(ブロチゾラム)
サイレース、フルニトラゼパム(フルニトラゼパム)
ドラール(クアゼパム)
が挙げられます。
 
それぞれについて説明します。
 

ハルシオン(トリアゾラム)

ハルシオンは、超短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、非常に即効性に優れている睡眠薬です。
 
個人差はあるものの、服用後10~30分後には眠気を感じられ、1~2時間で血中濃度が最大値になることから、主に入眠障害に用いられます。
 
非常に効果が高い睡眠薬である一方で、強力が故に睡眠薬への耐性がつきやすく、依存のリスクも高いことが知られています。
 
また、超短時間作用型であり、薬の効果が切れるのが早いことから、患者様の状態によってはレム睡眠行動障害などを引き起こす可能性もあるため、介護者の十分な見守りのもと使用しなければなりません。
 
 
ぽりぽり
依存を加速させないためにも、少量での服用開始や、早期での服用停止が重要です。
 
 <メリット>
即効性が期待できる
入眠障害の効果が強い
翌朝の眠気が少ない
ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)
 
<デメリット>
作用時間が短い(中途覚醒や早朝覚醒に効果が乏しいことがある)
健忘の副作用に注意が必要
依存性が高く、減量が困難
乱用されることがある
 
昔から処方されているお薬ですが、漫然と服用しているケースが時々見られます。
依存状態で切るに切れない状況が長年続き、結果として転倒し骨折という最悪のケースも見られます。
 
ご家族が睡眠薬を飲んでいる場合、何を飲まれているのか確認は大事です。
特に高齢になればなるほどリスクは高まるので、お子さんたちが気づく必要があります(残念ながら、医師は漫然と出しちゃっているケースがあるので)。
 

レンドルミン(ブロチゾラム)

レンドルミンは、短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、脳をリラックスさせる作用が強い睡眠薬です。
 
ハルシオンに比べて、作用時間が長いため、入眠後も睡眠薬の効果が続き、中途覚醒や早朝覚醒の改善も期待できます。
 
また、筋弛緩作用や抗不安作用が認められており、興奮状態や不安状態が原因で入眠できない患者様に非常に有効です
 
薬の強さは他の睡眠薬と比べて標準的ではあるものの、一定の依存の可能性があるため、利用する際と利用を停止する際は注意が必要です。
 
<メリット>
即効性が期待できる
入眠障害に有効
中途覚醒や早朝覚醒にも有効
ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)
 
<デメリット>
眠気(翌朝への持ち越し)の副作用に注意が必要
ふらつきの副作用に注意が必要
筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがある
依存性に気を付ける必要がある
高齢者でせん妄を生じることがある
 
私が研修医のころは、不眠患者さんがいれば、入院でも外来でも「レンドルミン」を処方することが非常に多かったです。
しかし、高齢者ではせん妄を発症したり、筋弛緩作用から転倒のリスクが高くなったりすることから、処方する機会が減っています。
 
薬や環境の変化などから時間や場所が急にわからなくなることを言います。また、注意力や思考力が低下して様々な症状を引き起こします。特に、錯乱した状態で暴力的になることもあります。
 

サイレース、ロヒプノール(フルニトラゼパム)

サイレース、ロヒプノール(フルニトラゼパム)は、中間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、催眠作用に非常に優れています。
 
中間作用型であるため、睡眠時間全体に効果が認められ、入眠障害だけではなく、中途覚醒や早朝覚醒の改善も期待できます。
 
サイレースの効果は非常に強く、切り札ともいうべき睡眠薬になります。その強力さゆえ、犯罪に使われてしまうこともあるくらいです。
 
しかしながら副作用や依存性についても注意が必要で、安易に使うべきお薬ではありません。ほかの睡眠薬でも効果が不十分な場合に、最後の選択肢として考慮していきます。
 
非常に強力であるため、処方されることは滅多にありません。しかし、処方された場合には医師の指示に従うことはもちろんのこと、こまめに医師と状況の共有を行いながら慎重に利用しましょう。
 
<メリット>
即効性が期待でき、効果が強力
入眠障害に有効
中途覚醒や早朝覚醒にも有効
ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)
注射剤が発売されている(興奮が激しい入院患者さんに使われる)
 
<デメリット>
眠気(翌朝への持ち越し)の副作用に注意が必要
ふらつきの副作用に注意が必要
筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがある
依存性に気を付ける必要がある
高齢者でせん妄を生じることがある
海外旅行で注意が必要(持ち込み禁止の国がある)
 
 
もうほぼ新規で処方することはなくなりました。デメリットが大きすぎて、メリットを凌駕してしまいます。
他院でこの薬を出してもらえないために、出してもらえる病院を探し求める患者さんもいるようです。
 
 
ぽりぽり
私は決して処方しませんが…睡眠薬はどのように使用されるかわからないので処方するにも注意が必要です。
 

ドラール(クアゼパム)

ドラールは、長時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、催眠作用に特化した薬です。
 
作用時間が非常に長いので、中途覚醒や早朝覚醒にも高い効果を示す上に、体内で成分が分解されるとともに、抗不安薬としての効果も発揮します。
 
そのため、強い不安感やストレスなどによって引き起こされる睡眠障害の改善が期待できます。
 
ドラールは上述した3種類の睡眠薬と比べても、比較的作用が弱く、依存性も低いです。
 
ただし、作用時間が長い分、翌朝のふらつきやめまいなどの症状が引き起こされる可能性も高いため、起床時には十分注意をする必要があります。
 
<メリット>
即効性と強い効果が期待できる
入眠障害に有効
中途覚醒や早朝覚醒に有効
抗不安効果が期待できる
離脱症状が少ない
ジェネリックが発売されている
 
眠気(翌朝への持ち越し)の副作用に注意が必要
ふらつきの副作用に注意が必要
筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがある
睡眠時無呼吸症候群で使えない
高齢者でせん妄を生じることがある
食後に服用すると急激に吸収されてしまう
ジェネリックの割に薬価が高い
 
私はドラールも処方することがほぼないです。
長時間作用することのデメリットが多いとおもいます。
 

まとめ

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の概要や主な副作用、薬の種類について解説しました。
 
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は効果が強力なものが多い分、副作用のリスクも大きいです。
 
いまでは、ベンゾジアゼピン以外のお薬も処方できるようになってきており、睡眠薬の状況も昔とはだいぶ変わってきています。
 
そのため、処方する機会も減ってきて、第一選択として、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を処方する機会は激減しました。
 
漫然と内服していると、依存や耐性も出てきます。
とくに高齢者は年齢とともに副作用が出やすくなり、転倒やせん妄など出現すると致命的になりえます。
 
何を飲んでいるのかしっかりと自分自身で把握し疑問がある場合は医師に相談しましょう。
また、高齢者は何を飲んでいるのかさえ、無頓着になっています。ご家族や周りの人が気づいてあげることで、重大な事故を防げる可能性もありますので、半年や3か月に1回程度は定期的にお薬の確認をするとよいでしょう。
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