精神科や心療内科が扱う病気①〜春うつ病〜春に増える疾患

これから多くなると予想される「春うつ病」についてです。

先日、外来をしていると、若い男性が「春うつ病」と考えられる症状で私の外来を受診されました。いまから増えてくると予想され、このブログを読んでいただいた方あるいはご家族で悩んでいる方の一助となれば幸いです

目次

春うつ病とは?

一般的に言われるうつ病と症状的にはあまり変わりはありませんが、時期によって発症の原因が違います。「季節性うつ」とも言います。季節性うつの一つである「冬季うつ」は、その原因として日照時間が短いことが挙げられます。しかし春は徐々に日照時間が延びてくる時期になります。ではなぜ、春にうつ病を発症するのでしょうか。

冬枯れした木々に新芽が一斉に芽吹き出す3月から4月にかけては、「木の芽時(このめどき)」と呼ばれます。実はこの「木の芽時」は、昔から精神科医の間では、メンタル状態が悪化する人が増える要注意時期として有名です。

この時期、もともと何らかの精神疾患を患って通院している人が悪化するだけでなく、入院している患者さんも症状が悪化するケースが多いです。また、新規の患者さんも他の季節より多い印象です。気持ちが落ち込み、やる気が起こらないといった抑うつ症状や、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるといった睡眠障害のほか、言いようのない不安や焦りが増し、感情が不安定になるといった症状を訴える人も少なくありません。メンタルだけではなく、体が重だるい、めまいがする、胃の調子が悪く食欲が落ち気味、腹痛や下痢、便秘がひどいといった体の症状を合併する人もいます

春うつ病の原因は?

1.環境の変化による過度なストレス

日本の春は、様々な変化が一気に起こるため、心身がその変化に対応できなくなると心や体の不調が発生してしまうのです。春は進学・就職のシーズンでもあり、新学期、新年度の「新しい生活」が始まり、「新しい人間関係」も作られていくことで、変わっていく環境に心と体がまだ慣れていない時期です。また、暖かい日が続いた直後、急に寒くなるなど寒暖差が激しい日もあり、気候的にも落ち着かない時期になります。

新しい環境に身を置くことになった場合、今まで構築してきた仕事のスキルや人間関係等を失うことに大きな喪失感やそれに伴う絶望感などを持ってしまう人もいます

2.自律神経の乱れ

自律神経の乱れによって、全身の倦怠感、頭痛、肩こり、不眠、憂鬱感など心身の不調が現れます。朝夜は寒く、昼は暖かいのが春という季節です。気候の激しい変化は、心と体への負担の原因となります。心身への負担は自律神経を常に緊張させることになるので、体調不良や意欲の減退、イライラを引き起こし、うつ病を発症しやすくなってしまいます。

春うつ病の症状

先にも述べたように、「春うつ病」と「うつ病」はほぼ同じ症状が出現します。例えば、日々のことに興味を失ってしまったり、やる気が起きない、過呼吸、イライラして落ち着かない、寝つきが悪くなる、食欲がなくなり体重が減る、以前はできたことがうまくできない、決断できないなどが挙げられます。

半分以上当てはまった方は要注意です。しかし、すぐに精神科や心療内科に診察に行くには勇気が必要ですよね。そんな時は、ネットで検索するとうつ病のセルフチェック項目が出てきますので、それを活用し、「うつ」が疑わしいと判定されたら受診してみるのもいいかもしれません。いまは、昔ほど精神科の敷居は高くなく軽い気持ちで受診していただければと思います

明らかな症状が出ていないからといって安心はできません。変化がたくさんあるこの時期には、自覚のないままに「気疲れ」が蓄積し、体力を消耗させている人が少なくありません。この時期に不調が明らかにならなくても、5月の連休前後に「五月病」として、疲れが表に出てくるケースも多々あります。

春うつ病の対策

  1. 光を浴びる
  2. 適度な運動
  3. 規則正しい生活習慣
  4. 他者とのコミュニケーションをとる
  5. ストレスを溜めこまない

といったことが春うつ病の対策や予防につながります。

心身を十分に休ませ、自律神経を正常なリズムに整えるためには、やはり「睡眠」が大切です。毎日6時間以上の睡眠時間を確保し、疲れている日や緊張することが多かったと感じる日は7~8時間くらい眠れる時間を確保しましょう。

仕事や人間関係などでのストレスというのは誰しもあるはずです。自分が悪いなどと思わずに、家族や友人に相談することや精神科や心療内科など専門家を頼ることで張りつめていた心が楽になったり、うつ病などメンタル的な病気の予防・早期発見につながります。
充実した生活は健康な心と身体から!思い悩み、身体に出た不調を「まだ大丈夫かな」と頑張りすぎてしまわずに、上記の対策をためしてみたり、ゆっくりと休養を取るなどして、自分を気にかけ労わってあげましょう。

私の外来に来られた患者さんの中には、この「春うつ」の症状が明らかに出ているのに、「まだ頑張れる」と頑張りすぎた結果、自分を追い込んでしまい、自傷行為に至った人もおられます。

いまは、昔と違い、精神科や心療内科の敷居は低くなっています。追い込まれる前に気軽に相談、受診してもらえればと思います。もちろん、春が過ぎ、よくなったら通院しなくてもいいですので。

次回は、典型例を症例提示をしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

総合内科専門医と循環器専門医資格をもつ精神科医の備忘録です。
①医療のこと(循環器、精神科領域中心)
②子供の受験のこと(小学6年生 浜学園 公文)
③投資のこと(米国中心の投資について)
④時短家電のこと
⑤論文のこと(論文の読み方、書き方など)

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