現役の嘱託産業医が、経験と最新事情を踏まえて産業医のすべてを解説する【完全版】シリーズ。いよいよ最終話です。
第5話では、契約後1年目の実務の型をお話ししました。

最終話のテーマは、産業医という副業が育ってきた人だけがぶつかる問い。
「産業医報酬、個人で受け続けていいのか?」です。
個人で受け続けると何が起きるか
産業医報酬を個人で受け取ると、勤務医の給与と合算して課税されます(総合課税)。
勤務医としてすでに高い税率帯にいる場合、産業医で稼いだ分には最初から高い税率がかかる。第4話で「勤務医の年収くらいが一番損する」と書いた構造そのものです。
ぶらっく頑張って顧問先を増やすほど、税率も上がっていく。この矛盾に悩んだ
私はこの問題の答えとして、法人を設立しました。
法人で受けるという選択肢
産業医業務を含む副業を法人の事業として整理すると、風景が変わります。
- 事業に必要な支出を法人の経費として明確に管理できる
- 家族を役員にして役員報酬を支払えば、所得を分散できる
- サイト運営など他の副業と合算して「一つの事業」として育てられる
- 利益800万円以下なら法人税率はざっくり25%程度。個人の最高税率帯より低い
この設計の具体的な中身(役員報酬の考え方や1年目の実際の数字)は、別シリーズ「医師が法人を作るまで」で詳しく公開しています。


ただし、産業医×法人には固有の論点がある
ここが最終話で一番伝えたいことです。産業医の法人化には、他の副業にはない注意点があります。
①産業医に選任されるのは「医師個人」
労働安全衛生法上、事業場の産業医として選任されるのは法人ではなく医師個人です。法人はあくまで報酬の受け皿・業務の管理体制であって、産業医の職務と責任は医師個人が担います。
②すべての契約を法人で受けられるとは限らない
契約の相手(企業や仲介業者)によって、法人との業務委託契約に対応してくれる場合と、医師個人との契約しか受け付けない場合があります。実際、私もすべての契約を法人で受けられているわけではありません。
新規契約の際に「法人契約は可能か」を確認する、既存契約は更新のタイミングで相談する、という現実的な進め方になります。
③税務・社会保険の論点は必ず専門家に
- 報酬の性質(給与か業務委託か)は形式ではなく実質で判断される
- 勤務医として本業で社会保険に加入している場合の整理も、個々の状況で異なる
- この領域の自己判断は危険。税理士・社労士への相談を強くおすすめします



法人化はゴールではなく設計。専門家と組んで初めて安全に機能する
私は税理士さんと顧問契約を結んで税務関係はお願いしています。
ざっと年間35万くらいです。
法人化を考える目安
では、いつから法人化を考えるべきか。私の考える一つのラインは、シリーズを通じて書いてきたとおり副業利益300万円です。
産業医だけでこのラインに届くには顧問先を積み上げる必要がありますが、サイト運営や講演など他の副業と合わせて超えるなら、法人という器を検討する価値が出てきます。逆に、そこまでは個人のままで十分です。
よくある質問
Q. 法人契約を断られたら?
無理強いはしないことです。個人契約で受けつつ、更新のタイミングで改めて相談するのが現実的です。契約形態より信頼関係のほうが大事です。
Q. 法人化のタイミングは?
本文で書いたとおり、副業利益300万円が一つの目安です。設立の具体的な流れは「医師が法人を作るまで」シリーズをご覧ください。
Q. 法人にすれば産業医の責任も法人に移る?
いいえ。選任されるのは医師個人であり、職務と責任は医師個人が担います。法人はあくまで報酬の受け皿と業務の管理体制。ここを誤解しないでください。
シリーズのまとめ:全話リンク
これで【医師の副業No1・完全版】シリーズは完結です。全話をまとめておきます。










おわりに
数年前、「プラス月10万を目指そう」から始まった産業医という副業は、私にとって法人の柱に育ちました。
資格を取り、案件を獲得し、実務で信頼を積み、器を整える。産業医は、医師が自分の働き方をデザインするための最良の入り口だと今も思っています。
このシリーズが、最初の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。



まずは講習会の予約から。行動した人にだけ、次の景色が見える
それでは、また別の記事でお会いしましょう。
※本記事は私個人の経験と見解に基づくものです。法人契約の可否は契約先により異なり、税務・社会保険の取り扱いは個々の状況によります。必ず税理士・社労士等の専門家にご確認ください。





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