現役の嘱託産業医が、経験と最新事情を踏まえて産業医のすべてを解説する【完全版】シリーズ。第3話です。
第2話では、産業医資格の取り方を更新制度まで含めて解説しました。

資格を取ったら、いよいよ案件獲得です。ここが産業医という副業でもっとも大事なフェーズだと私は思っています。
ぶらっく資格を取っただけでは、案件は来ない。ここからが本番
旧記事では医師会と仲介業者の2ルートを比較しました。まずはその内容をベースに、後半で経験を積んだ今だから言える第3のルートを加えます。
産業医の契約に至るまで
産業医の資格をし得したものの企業と契約ってどうやってするの?って思いますよね。
個人的な繋がりで契約をゲットするのを除いて手段は二つあると思います。
医師会からの斡旋
産業医仲介業者からの斡旋
の二つです。それぞれについて詳しく見て行きましょう。
医師会からの斡旋
医師会に所属しているなら医師会からの紹介は非常に有力な手段です。
メリット
・競合が少ない
・単価が高いことが多い
・縛られない
デメリット
・案件が少ない
・医師会に入ってないと斡旋されない
競合が少ない
医師会は開業医がメインで加入しているので、勤務医の割合は少ないです。
では、医師会斡旋の産業医は、なぜ競合が少ないのでしょうか?
住んでいる地域によっては、開業医にとって産業医の人気が低いところがあります。
昔の産業医業務はメンタルヘルスがなかったので、外科の先生でも片手間に産業医ができていたようですが、メンタルヘルスが義務化され開業医の先生からは倦厭されるようになりました。
つまりは、面倒臭い産業医よりももっと美味しい案件があるから産業医はやらないという流れでしょうか。訪問診療とかする方が産業医より儲かるようですし、開業医にとってのメリットは勤務医やバイト医よりは薄いかもしれません。
ということで、医師会斡旋は開業医をすり抜けて勤務医まで流れてくることがあります。
そういう私も2021年に産業医を取得してから、医師会から5件斡旋を受け契約まで至っています。
積極的に医師会にアプローチ
私の地区では人気がないのか、応募が少数で成り手が見つからないというケースもあったようです。
産業医を取得し医師会に所属しているならば、まずは所属医師会のほうに電話で「産業医の案件がありませんか?」と尋ねてみるのもよいでしょう。
たとえそのタイミングで案件がなくても、産業医担当の事務方さんが覚えておいてくれて、案件が発生した際に優先的に回してくれる可能性もあります。そんなこと恥ずかしくてできないとおもってじっと待ってても事態は自分が思うように動いてはくれません。
恥ずかしがらずに積極的にアプローチしたほうがいいと思います。私もそのようにしています。その結果、「次回案件がありましたらよろしくお願いします」とお願いすらされました。医師会からしたら、担い手を探すのは一苦労のようでWin-Winの関係を築けます。探している企業も合わせたら、まさに「三方よし」の関係となります。



積極的にアプローチしましょう!


単価が高いことが多い
産業医は人気な副業のため、基本的には需要よりも供給過多な状態です。医師は全体で33万人いますが、産業医資格を有する医師は10万人と医師の3人に一人は産業医資格を持っている計算になります。
現在は仲介業者の台頭により、残念ながら価格の低下が起こっています。
しかし、医師会経由ですと医師会が仲介手数料を全く取っていないこともあって、その分、医師個人の単価が高い傾向にあります。
私が最初に斡旋を受けたのは、
月1回1時間30,000円
月1回1時間30分50,000円
の2件です。
それに加えて、超過勤務面談などプラスアルファで業務が発生したら、それに応じた報酬をいただける契約となっています。
過疎の地域などではもっと単価が上がる可能性すらあります。
業務量としては、前の記事でも説明したように外来バイトとかよりも非常に楽です。
その後に、、、
月1回1時間7万円
などの案件も斡旋され、契約に至りました。
運要素も大きいですが、事業規模などで価格が変わるのも醍醐味です。
縛られない
仲介業者からの斡旋は、やはりいろいろ縛りがあって面倒です。
仲介業者によっては、企業を挟んで予定を調整する必要があったり、顔合わせ時に同行されたり、縛られてる感じが強いです。
一方で、医師会からの斡旋は、契約時に立ち会いはされるものの、細かい契約はそちらでやってください的な感じです。スケジュールも医師会を挟んで予定を組むこともありません。
交渉しだいでは、安全衛生委員会に今月はそちらに出向いて出席できないからWeb(ZOOMなど)でも大丈夫ですか?とか独自に交渉できますが、仲介業者からの斡旋では「必ず月一回は出向いてください」とか縛りが強い業者もあります。
「縛りがゆるい」という観点からも医師会からの斡旋に軍配が上がります。
案件が少ない
デメリットは案件が少ないということが一番です。
少し田舎ですと、企業そのものが少ないので、そもそも産業医の案件が少ないのです。
さらには、格安での仲介業者が増えてきたため、医師会ではなく、仲介業者に依頼するケースも多いと思います。ただ、仲介業者のピンハネも考慮するとピンハネがない医師会と変わらない気もします。
いずれにせよ、案件が少ないので、一度は電話するなどして直接的にアプローチしておくのが良いでしょう。
医師会に所属していないと斡旋をうけられない
そもそも論ですが、病院がある地域の医師会に所属していないと斡旋は受けられません。
私もそうなのですが、勤務している病院が医師個人個人を医師会に費用は病院負担で加入してくれていれば、医師会員なので斡旋を受けられます。
勤務している病院が医師の医師会費用を負担してくれていない場合は、賠償保険加入目的で医師会に所属するのもよいでしょう。
医師会賠償保険は、医師会費と損害賠償保険合わせて勤務医は年10万円弱です。損害賠償保険に加入でき医師会にも所属できるのでおすすめです。
以上が医師会から斡旋を受ける場合のメリット、デメリットです。
次に、仲介業者からの斡旋のメリット、デメリットを説明します。
斡旋業者からのメリット、デメリット
メリット
・案件が多い
・不慣れなところにサポートがある
デメリット
・競合が多すぎる
・縛りが多い
・単価が安い
案件が多いが競合が多すぎる
案件は医師会よりも豊富です。
斡旋業者に登録を済ますと、不定期にメールが届きます。
まぁまぁな頻度でメールがきます。
しかし、競合が多すぎてなかなか契約には行きつきません。面接に至ることも少ないです。
私は、資格を得てから6ヶ月で10件以上応募して2件契約に至りました。
そのうち1件は非常に美味しい案件でしたので、ラッキーでした。
たまに非常に美味しい案件が紛れ込んでますので、必ず応募するようにしていますが、なかなか面接や契約まで至りません。根気良く、応募するしかないです。
選定基準は、住んでいる地域、産業医歴、履歴書などを参考にして選ばれるようです。結構ブラックボックス的な感じです。
斡旋業者によっては、履歴書を数名ピックアップして企業に提出し、その企業が数名から1〜2名を指定し面接に至るようです。履歴書の良し悪しが運命を分けるようです。
とにかく、競合が多いので、本業を極めつつ応募し続け時が来るのを待ちましょう。
不慣れなところに対してサポートがある
企業によっては、産業医からの講話を希望されることもあるようです。
生活習慣病などの講義を社員さんにすることになります。その時のためにスライドを用意してくれていたり、トラブルが起こったときの対応をお願いできるようです。
トラブルが起こるシーンがあるかどうかわかりませんが。
医師会よりも安価
斡旋業者も増えてきており、産業医としていただける報酬の価格低下が起こっています。
斡旋業者によっては、月1回1時間で20,000円以下というところも出現してきていて価格競争が激しくなってきています。企業もコストをかけたくないので、安価のところを選択するようになっています。
私の考えは、単価が安くても、ゼロよりも『イチ』を目指し、履歴書に産業医経験ゼロから『あり』にするだけで次のチャンスの幅は広がってくると思いますので、最初は、安価でもやってみることが大事かなぁと思います。
大手の斡旋業者について
医師会に加入できない場合、斡旋業者にエントリーすることになるのですが、私が実際に登録したのは「ドクタートラスト」さんです。
マージンや癒着は一切ありません。当時登録した実感として、単価と求人数は悪くない業者さんでした。
登録から契約までの流れ
登録方法は簡単です。
ホームページから登録し、メールで送られてくる履歴書を提出します。
履歴書を送った後に、トラストの担当者さんと面談します。そして、大まかな流れと質疑応答をして本登録となります。
その後、不定期に求人メールが送られてきて、指定通りに応募することになります。
応募し運が良ければ面接、そして契約という流れになります。
登録は無料なので、相場観をつかむ目的で使ってみるのも一つです。
ルート③:直接契約・紹介
旧記事を書いた時点の私は、このルートをほぼ知りませんでした。しかし経験を積んだ今、最終的に目指すべきはここだと断言できます。
どうやって生まれるのか
- 既存の顧問先からの紹介:「知り合いの会社も産業医を探している」は本当によくある
- 取引先・知人経由の相談:産業医をやっていると公言しておくと、思わぬところから声がかかる
- 士業(社労士・税理士)からの紹介:企業の労務問題に最初に気づくのは彼らであることが多い
メリットとデメリット
- 仲介手数料ゼロで、条件交渉も直接できる
- 信頼ベースで始まるので、長く続きやすい
- 一方で、契約書作成・請求などの事務は自分で担う必要がある



1件目の顧問先で誠実に働くことが、最強の営業活動だった
現実的な戦略:ルートは段階で使い分ける
- 最初の1件:医師会斡旋か仲介業者で獲得する。未経験でも入りやすく、サポートも得られる
- 1~2年目:目の前の顧問先で信頼を積む。実務経験こそ次の案件の源泉
- その後:紹介・直接契約が自然に増え、単価も条件も改善していく
供給過多の市場で選ばれ続けるために大事なのは、資格でも肩書きでもなく、レスポンスの速さと、経営者・人事と同じ言葉で話せることだと感じています。
契約前のチェックポイント
複数の契約を経験して分かった、契約前に確認すべき項目です。
- 業務範囲:衛生委員会・巡視・面談のどこまでが基本報酬に含まれるか
- 訪問頻度と時間:「月1回1時間」の定義を明確に
- 面談や健診チェックの加算:件数が増えた場合の取り決め
- 交通費の扱い:実費か込みか
- 解約条項:何ヶ月前の通知で解約できるか
ここを曖昧にしたまま始めると、「気づいたら業務だけ増えている」ことになりかねません。
よくある質問
Q. 医師会には入ったほうがいいですか?
斡旋ルートを使うなら入会が前提です。会費はかかりますが、単価の高い案件が1件取れれば十分回収できる水準です。仲介業者ルートだけでいくなら必須ではありません。
Q. 何社まで増やせますか?
本業のスケジュール次第ですが、月に使える平日の半日×数回が確保できれば、数社は十分に回せます。時間の作り方は次回の第4話で詳しく解説します。
Q. 条件が合わない案件は断っていい?
断って構いません。無理に受けて中途半端になるほうが信用を損ねます。ただし断り方は丁寧に。斡旋元との関係は次の案件につながります。
まとめ
- 案件獲得は医師会・仲介業者・直接契約の3ルート
- 医師会は単価高・競合少だが案件少。電話で聞くのも有効
- 仲介業者は案件多・サポートありだが競合多・単価安め
- 最終的に目指すのは紹介・直接契約。誠実な実務が最強の営業
- 契約前に業務範囲・頻度・加算・交通費・解約条項を確認
次回・第4話は「勤務医の時間捉出術」です。


※本記事は私個人の経験と見解に基づくものです。報酬相場は地域・契約内容により異なります。









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