心臓の病気として多くの人が患う「心房細動」について説明いたします。
今回は『心房細動の症状』についてです。
心房細動を患ったといわれる有名人は、小渕恵三元首相、プロ野球元監督の長嶋茂雄さん、サッカー日本代表元監督のイビチャ・オシムさんなど数多くおられます。
かなり厳重に健康管理をされていた人たちでも心房細動に知らず知らずのうちに患ってしまい、最終的に心房細動が原因で脳梗塞を起こしてしまいました。
ただ、知っておくだけでも今後の人生を大きく変える可能性があります。ご自身のためにもなりますし、ご家族のためにもなるかもしれません。
👇心房細動とは一体どういう病気かは以下の記事を参照ください!
私は10年以上循環器専門医として診療を行なっています。
インターネットには「心房細動」に対する数多くのホームページがありますが、私の経験から患者さんが疑問に思う点などを踏まえながら、患者さん目線に立って説明していきたいと思います。
心房細動を見つけるのに必要な検査
・心房細動と診断するには通常『心電図』でしか診断できない。
・採血検査やレントゲン写真などでは診断はできない。
・心房細動が出ていないときは心電図でも心房細動と診断できない。
基本的に、心房細動と診断するには「心電図」でしか方法はありません。採血やレントゲンといったものでは診断はできないのです。
では、どうやって心電図で診断するのか具体的にみていきましょう。
前回の記事で、心房細動は、心房細動の発作時間がどの程度持続するかで、「発作性」「持続性」「長期持続性心房細動」「永続性」の4種類に分けられると説明いたしました。
心房細動の種類 | 発作の持続時間 | 診断に必要な検査 |
発作性心房細動 | 7日以内に治る | ホルター心電図など 自覚症状がなく診断できない場合がある |
持続性心房細動 | 7日を超えても続く | 通常の心電図 |
長期持続性心房細動 | 1年以上続く | 通常の心電図 |
永続性心房細動 | 治療不可能なもの | 通常の心電図 |
上記の表のように、心房細動を見つけるために必要な検査、つまり、「診断に必要な検査」は心房細動の種類によってことなります。
発作性心房細動以外の心房細動は、心電図を取りさえすれば「心房細動」と診断可能です。
逆に、発作性心房細動は、心房細動が出たり出なかったりしますので、出ていない正常なときに心電図を検査しても心房細動と診断できません。
発作性心房細動について詳しくみていきましょう。
発作性心房細動の検査
発作性心房細動は、心房細動が出ていない時は全くの正常です。
ですから、出ていないときに通常の心電図検査をしても心房細動があるかどうかはわかりません。
「症状が出たときにすぐにきてください」と説明していても、来院したころには治って正常になっている患者さんもいました。
ですから、通常の心電図以外の方法で心房細動を発見します。
ホルター心電図(24時間心電図)
下の写真のように心電図を24時間つけっぱなしにする検査をホルター心電図と言います。
例えば、5月24日の10時に病院でつけたら、5月25日の10時に返しにきて外してもらう必要があります。
以前は左の写真のようにものものしいものでしたが、最近では右の写真のようにコンパクトになっています。
基本的に、短い間であればお風呂にも入れます。防水加工され、また非常に取れにくくなっています。
ただ、装着している24時間に心房細動がでないと、わからないまま終わるということが少なくはないです。
調べてる間に、「脳梗塞になってしまった」ということもあり得る話です。
ですから、ホルター心電図は、患者さんからしっかりお話を聞いて、動悸などの症状の頻度が多い場合にするようにしています。
携帯心電図
携帯心電図とは下の機器のことで、常に持ち歩いてもらい、動悸など症状が出現したときに心電図の記録と保存が可能です。
上のようにネットショップでも売っていますが、通常は病院で貸し出してもらい動悸や眩暈などしたときにご自身で記録します。
記録方法は簡単で、上の図のように心臓がある左胸に押し当ててボタンを押すだけで記録されます。
記録された心電図は、専用ソフトで解析され不整脈かどうか医師が判断します。
操作は簡単なので、比較的高齢の方でもご自身でできます。自分でできる自信がない方はご家族に操作を覚えていただくことになります。
大体、1〜2ヶ月くらい貸し出して、何回か記録できたら早めに持ってきていただきます。ただし、どの病院でも採用しているわけではないので、受診前に問い合わせると良いでしょう。
携帯心電図で大体記録できることが多いです。一方で、動悸症状がでているときに記録しても心電図が正常であれば、心房細動はないという診断になります。その場合は、精神的な影響で動悸を起こしていることが多いと思います。
植込み型ループ式心電計
心房細動の症状の一つで「失神」があります。目の前が真っ暗になり意識を失ってしまう危険な状態です。
繰り返す失神発作を認め、心電図やホルター心電図検査等のいろいろな検査をしても原因が分からない場合があります。
このような場合に、診断に役立てるために開発されたのが、体内に小型心電計(下の写真)を埋め込みます。これが植込み型ループ式心電計といいます。長時間心臓の拍動を継続的に監視し、不整脈や失神などの症状が起きた時の心電図を記録する装置です。
失神の原因が、心房細動なのか他の不整脈なのか、はたまた、心臓以外に原因があるのかなどがわかります。電池の寿命は約3年くらいです。
上の絵のように、左胸のやや真ん中よりの皮膚の下に滑り込ませるように挿入します。
局所麻酔で30分くらいで終了します。日帰りでやることが多いです。MRIもオッケーです。
不整脈を感知したときに自動的に記録できます。また、症状があったときに自分で記録させることもできます。
機械を植え込んだ後は、数ヶ月に1回、記録された心電図を解析するために病院を受診します。
植込み型ループ式心電計の遠隔モニタリング
遠隔モニタリングとは、病院に行かずとも記録された心電図が自動的に専用のサイトにアップロードされる機能を言います。
遠隔モニタリングを行うために、ご自宅に専用の中継機器を設置して頂きます。この機器を通し、記録された心電図の情報を、外来受診することなく病院で閲覧することが可能となります。
すぐに受診すべき心電図が判明すれば、医療機関から患者さんに連絡がいきます。ただし、すぐに医療者が駆けつけたり、救急車がきたりするようなシステムではありません。
アップルウォッチ
アップルウォッチ(Apple Watch)は、心房細動を見つけ出すアプリを備えています。
腕につけているアップルウォッチが心臓からの電気シグナルを解析し、心房細動かどうか判断してくれます。
アップルウォッチのソフトは、不整脈に最も多い心房細動の兆候を検知するために役立ちます。
アップルウォッチを装着しているときに、心房細動がでれば上の写真のように警告されます。
(ただし、100%検知するわけではないのでご注意ください。)
これがあったら、著名人たちも脳梗塞にならずに大事を逃れていたかもしれないですね。
時計ひとつで脳梗塞が予防できる可能性がある。すごいことです。
個人的に、還暦のお祝いとしてご家族にアップルウォッチを贈ってあげることをお勧めします。
*アップルから何ももらったりはしていません。
アップルウォッチ(Apple watch)はどのシリーズを買ったら良いか?
・心電図アプリケーション→シリーズ4以上
・不規則な心拍通知機能→シリーズ3以上
以上から、シリーズ4以上を買えば問題ない
心電図アプリケーションは、Apple Watch Series 4、5、6で利用が可能になります。
この機能によって初めて消費者向け製品として、ユーザーが手首の上で心電図を記録することを可能にし、自分の心臓の健康について知りたいと思った時に心拍リズムを記録、重要な情報を医師に共有できるようになります。
また、Apple Watch Series 3以降で利用できる不規則な心拍の通知機能は、バックグラウンドで心拍リズムを時折チェックし、心房細動の兆候がある不規則な心拍リズムを特定した場合に通知をします。
心電図アプリケーションと不規則な心拍の通知機能は、不整脈に最も多い心房細動(AFib)の兆候を検知するために役立ちます。
とアップルのホームページに案内されています。
シリーズ3は「心房細動かもね?」という感じだと思いますが、シリーズ4以降は心電図が解析されるので「心房細動の可能性が高い」とより正確に判断できるようですから、シリーズ4以降の購入をお勧めします。
まとめ
発作性心房細動以外は通常の心電図でわかる!
発作性心房細動はいつ出るかわからないので通常の心電図でわからないことが多い
ホルター心電図(24時間心電図)、携帯心電図が病院で可能な検査。
失神があれば植込み型ループ式心電計が適応となる。ただし皮下に機器を植え込むため日帰り手術必要。
アップルウォッチで心房細動を感知できる可能性がある。還暦祝いにアップルウォッチを送ろう。
ほんの少し前までは、ホルター心電図や携帯心電図くらいしかできませんでした。それらでは発見できずに脳梗塞を起こした患者さんもおられると思います。
いまや、植込み型ループ式心電計が開発され、失神の原因となる不整脈(心房細動など)を感知できるようになりました。
そして、さらに、Apple watchで心房細動を発見できる時代になったのです。すごく胸熱な製品です。
このApple watchがあったなら、著名人の心房細動による脳梗塞を予防できたかもしれないのです。
ですので、還暦を迎えた大事な人にApple watchを送ってみてはいかがでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
一人でも多くの心房細動による脳梗塞を予防できれば幸いです。
👇つぎは「心房細動の薬について」です。ぜひとも参考にしてください。
<参考文献>
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