【仕事でメンタル不調になったら】産業医面接のススメ

50人以上の事業所では、「産業医」に従業員の健康管理をお願いする必要があります。

産業医は、健康診断、職場巡視、超過勤務の面接やメンタルヘルスを行うことで労働者の健康を守ります

 

美寺ネスオさん
産業医って実際のところ何してるの?
働いててもお世話になったことないよ。
 
ぽりぽり
あんまりどんなことしているかって知らないですよね。
具体的にどのようなことをしているのかご説明します。
 
健康に働いているのであれば、産業医のお世話になることは少ないと思います。
 
ただ、最近はメンタルを病む人が多く、メンタルヘルスを担う産業医の重要性が注目されています。
 
 
ぽりぽり
昔はメンタル不調は言い出しにくい世の中でしたが、今はメンタル不調はしっかりと認知されてきています。
 
どんな時に産業医と面談できるのか?産業医を活用できるのか?を具体例を通じて説明していきます。
 
この記事がおすすめな人
👉 仕事で 心身にストレスを感じている方
👉 長時間労働を強いられている方
👉 仕事で強い不安を感じている方
👉 仕事上のストレスや不安などを産業医に相談したい方
👉 産業医を目指している医師やしている医師

 

目次

令和2年労働安全衛生調査

 
ぽりぽり
まずは、現代の働く人の状況を見てみましょう。
 
厚生労働省によると、精神や行動に関係する疾患の患者数は平成29年の調査で約120万人であり、ストレスによる心身の障害やうつ病やはもはや珍しいことではなくなりました。
 

令和2年の労働安全衛生調査(実態調査)によると、

現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じることがある労働者の割合は 54.2となっています。

 

 
ぽりぽり
なんと半分以上が強い不安やストレスを感じています。
 

ストレスとなっていると感じることがある労働者について、主なもの3つをみると、仕事の量」が42.5%と最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が 35.0%、「仕事の質」が 30.9%となっています。

 

 
ぽりぽり
やはり仕事の量が1番のストレスの原因なんですね。
 

相談できる人はいますか?

 
ぽりぽり
仕事上で不安やストレスを感じた時に相談できる人はいるのでしょうか?
 

現在の自分の仕事や職業生活でのストレスについて相談できる人がいる労働者の割合は 90.8となっています。

 
ぽりぽり
90%以上の労働者が相談できる人がいるのは驚きでした。
もっと少ないと思っていました。
 

ストレスを相談できる人がいる労働者について、相談できる相手をみると、

「家族・友人」が 78.5% と最も多く、次いで「上司・同僚」が 73.8%となっています

 

また、ストレスについて相談できる相手がいる労働者のうち、実際に相談した労働者の割合は 74.1%となっています。

 
ぽりぽり
逆に言うと25%の人は、相談できずにいるということなんですね。

 

相談した相手をみると、「家族・友人」が 73.5%と最も多く、次いで 「上司・同僚」が 67.6%となっています。

 

結果を表したグラフですが、下記のようになっています。

 
ぽりぽり
産業医に相談できている人は、10%未満と非常に少ないです。
なんか残念な結果ですね。
 
そもそも産業医にどうやって相談するのかわからないが原因のような気がします。
産業医の認知が低すぎますよね。
美寺ネスオさん
自分の会社に産業医っているのかもわからないです。
 
ぽりぽり
そういう労働者が多いと思います。
どうやって産業医と面談できるか具体例を示しながら紹介します。
 
 

超過勤務からメンタルヘルス不調を訴えるケース

美寺ネスオさん
友人が長時間残業で精神的に病んでしまったみたい。どうしたらいいかな?
 
 
ぽりぽり
近くの心療内科など行くのもありですが、まずは人事を通じて産業医と面談できるかどうか聞いてみましょう。
 
長時間労働を強いられる結果、メンタルヘルス不調をきたす事例は少なくありません。
 
 
ぽりぽり
私自身、産業医をしている企業の従業員の方から「長時間労働からのメンタルヘルス不調」を相談されたケースはたくさんあります。
 
では、メンタルヘルス不調とはどのようなことを言うのでしょうか?
 
メンタルヘルス不調とは?

精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの

独立行政法人 労働者健康安全機構
「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」より

 
つまりは、仕事から受けるあらゆる精神的な不調のことを指します。
 
 
ぽりぽり
「メンタルの不調」とは精神的な障害やだけではなく、本人が苦しい状態、日常生活に支障が出る可能性のある【 心と行動の問題 】も含まれます。

メンタルの不調が原因で身体の病気にかかったり、働くばかりか健康的な生活を維持することができなくなることがあります。

生活が崩れると治療が困難になり、重症化することもありえます。
 
本人や周囲が「これくらい」「まだ大丈夫」と思うものでも早めに産業医や専門機関を受診することで、休職や重症化を防ぐことができるのです。
 
それでは、長時間労働から産業医に至るまでケースを参考にしながら説明します。
 

長時間労働者面談に至るケース

 
ぽりぽり
具体例を示します。
例:30代男性
職業:工場機器メンテナンス業務
役職:主任(若手の教育とノルマの板挟みを感じるポジション)
状況:クライアントからの受注が多くなり、3ヶ月連続で100時間を超える時間外労働がつづいた。さらに、コロナ感染により同僚が抜けることがあり業務負担が多くなった。また、主任に昇進したことで、後輩の指導に加えて、進捗状況の報告書などの資料作成業務も加わった。
 
依然として、コロナ禍ということもあり、感染者が職場で出てしまうと1週間から10日間は抜けてしまいます。
この方の職場も、感染者が出たために残された人で業務をカバーすることになりました
 
また、主任に昇進したことにより、後輩の指導だけではなく、日々の進捗状況を報告するために資料作成などの業務が加わりました。
後輩の指導はまだしも、資料作成が慣れないデスクワークのため精神的な負担が増大しました
 
企業としても、クライアントからの依頼とその期限を守るべく過重労働を強いてしまいます。
 
ぽりぽり
クライアントから受注されている企業は、期限を重視しないと今後の受注減になるかもしれない状況と社員に長時間労働を強いてしまう状況とにジレンマがあります。
 
結果として、クライアントの期限を重視せざるを得ず、社員に長時間労働を強いる結果となりました。
 

疲労蓄積度チェックリスト

厚生労働省より、過重労働による健康障害を防止するため、働く人それぞれの疲労蓄積度を判定するためのチェックリストが公表されています。

 

企業によりますが、一定の水準を超える時間外労働をおこなった場合、以下のチェックリストの記入を求められ、これをもとに産業医の面談が行われます。

厚生労働省Hpより

 

このチェックリストがないような企業は、ブラック企業的な要素があるかもしれません。

 

時間外労働の一定の水準の例を提示します。

・時間外・休日労働時間が月100時間を越えた場合、かつ、疲労の蓄積が認められる(申出による)

・時間外・休日労働時間が月80時間を越え、疲労の蓄積が認められる、または、健康上の不安を有している(申出による)

これ以外にも、各事業所の基準がそれぞれ設けられています。

 
「申出による」とありますが、優良企業であれば、所定の基準以上の時間外労働をしている社員に申し出がなくても、チェックリストを配り、産業医の面談を促す企業もあります。
 
もし、長時間労働をしているにも関わらず、チェックリストをもらえない企業に勤めている場合で心身に不調を感じていたら、このチェックリストを人事や衛生委員会の委員に申し出てみましょう。
 
「そんなものはない!」といわれたら、ブラック企業認定となるでしょう。
その場合は、労働基準監督署に相談してみましょう(こっそりね)。
 

このケースは

このケースの社員さんは、優良企業であったので、本人の申し出がなくても残業時間が多かったことからチェックリストが渡されました。
 
この社員さんは、身体的な疲労度も、精神的な負担も非常に多く感じていましたので、先ほどのチェックシートの総合判定が「7」と最大値を記録してしまいました。
 
これをもとに、安全衛生委員会の委員の方から連絡があり、早急に面談をしてほしいと私に依頼がありました。
 

産業医による面談

面談により長時間の労働により疲労が蓄積し健康障害が発生するリスクが高まっている労働者に対して、その健康状況を把握します。

 

 
ぽりぽり
面談を通じて指導を行います。
面談指導

☑️ 勤務状況や疲労の蓄積状況などの把握

☑️ メンタルヘルス面でのチェック

☑️ 把握結果に基づく必要な指導

☑️ 必要に応じて精神科や内科などの医療機関への紹介

 

状況に応じて労働者本人に対する指導を行うとともに、その結果を踏まえた事後措置を講じます。

産業医は、結果を事業者に報告しその結果をもとに事業者は事後措置を講じます。

 

事後措置とは?
事業者が医師の意見を聴取し必要に応じて
☑️ 就業場所の変更、作業の転換
☑️ 労働時間の短縮、深夜業の回数の減少
☑️ 衛生委員会等への報告
などを講じる
 
 
ぽりぽり
現代は、労働者保護の立場をとる企業も多くなっており、産業医の意見を尊重してもらえます。
結果として、配置転換や、残業の軽減、労働負担の軽減をしてもらうケースが多くなってきています。
 
まとめると以下の図のようになります。

厚生労働省Hpより

 

このケースは

ご紹介しているケースは、100時間を超える超過勤務が3ヶ月も続いた結果、身体的にも精神的にも限界がきていました。
 
面談の結果、本人には精神科や心療内科などの受診を勧めました。
また、事業者には、長時間勤務の軽減および休暇の付与を提案しました。
 
 
ぽりぽり
比較的理解のある事業者であったため、すぐに軽減してくれました。
 
残業時間は40時間以下、休日は連休の付与でまずは対応していただきました。
 
1ヶ月後に再面談を行ったところ、顔は明らかに穏やかになっていました。
 
 
ぽりぽり
「産業医と面談できてよかったです」と言っていただきました。
結局のところ、すぐに対応してもらえたので、精神科などの病院は受診せずに療養のみで回復できました。
今後は状況を見ながら、勤務状況を調整していくこととなりました。
 

小規模事業場において

労働者が常時50人未満である事業所は産業医がいません。
しかし、長時間労働者への意思による面接指導制度は法律で義務付けられています
 
これらの事業場については、長時間労働による健康障害を防止するため、地域産業保健センターを利用して面接指導を実施してください。
 

まとめ

✅ 長時間労働は身体的な不調だけでなく、メンタルヘルス不調も生じうる。

✅ 長時間労働を強いられている労働者は、遠慮なく申し出て医師の面談を受けるべき。

✅ 医師の面談の前にチェックリストを記入しておくと面談がスムーズになる。

✅ 面談の結果、労働環境が改善される可能性がある。

となります。

 

長時間労働をさせられ続けると、必ず身体および精神に害が及びます。

また、長時間労働は、脳や心臓疾患の発症と密接に関係しています。

 

仕事を末長く楽しく続けるためにも、ご自身の健康を第一に考えるようにしてください。

無理な労働は長続きしません。いつかは、必ず破綻します。

 

最後に、面接指導までの流れの図を載せておきます。

 

 
最後までお読みいただきありがとうございました。
少しでも参考になれば幸いです。
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この記事を書いた人

総合内科専門医と循環器専門医資格をもつ精神科医の備忘録です。
①医療のこと(循環器、精神科領域中心)
②子供の受験のこと(小学6年生 浜学園 公文)
③投資のこと(米国中心の投資について)
④時短家電のこと
⑤論文のこと(論文の読み方、書き方など)

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